あの鍵は果たして
今日帰ってきて、鍵を開けた。
いや、正確に言うと鍵穴に鍵を差し込んで、回すという動作をした。その時はイヤホンを装着して音楽を聞いていたので、解錠音は聞こえなかった。
そして、いつもよりもなんとなく手応えがなかったように感じた。
「回す方向間違えたかな」と思いながら、とりあえずドアノブを引っ張ってみたら、開いた。
もしかしたら鍵をかけ忘れていたのではと思い、とりあえず部屋の中を見回してみたが、特に誰かが入った様子とかはなかった。大事にはならなそうだ。
とりあえず一安心したが、そこからさらに疑問が湧いてきた。
あの鍵は果たしてちゃんとかかっていたのかどうか。
証拠となるのはいつもよりも手応えがなかったことだけだ。これではなにも証明できない。気の所為だと言われればそれまでだ。
もう鍵がかかっていたかどうかは永遠の闇に葬られてしまった。かかっていようとかけ忘れていようと、もう扉は開けてしまったし、映像とかにも残していない。ごく簡単に迷宮入りの事件を生み出してしまった。