二年ぶりの決戦

部屋に蜘蛛がいた。

わずか8文字でここまで絶望感のある言葉はなかなかない。

お風呂に入ろうと思って、なんの気なしに部屋の上の方を見たらなんかいた。最初はエアコンの配管かな?と思ったし、エアコンの配管であってくれと思ったけど、目を凝らしたら蜘蛛だった。蜘蛛って漢字でもう怖いのでこの先はクモって書きます。

僕は何度か書いた気がするけど虫が大の苦手である。蝶ですら怖い。そんな僕の家にクモが出てきてしまった。こんなもん恐怖以外の何物でもない。

クモは厳密には虫じゃないとかどうでもいい。大まかに分ければ一緒だ。益虫かどうかなんて関係ない。俺の目に入ってしまった以上、それは害虫なんだ。

そんなクモだけど、この家で出会うのは初めてではない。およそ2年前、今と同じく夏の終わり頃くらいに出会っていた。あの夜のことは今でも鮮明に覚えている。逃げ惑い、叫び、傘を手に持ってクモに立ち向かっていった。

結局最後は風呂場に閉じ込め、近くのドラッグストアでクモ用スプレーを買ってきて撃退した。およそ90分に渡る死闘だった。

 

そして今日、再びクモが出た。勘弁してくれと思ったけど、僕だって2年前から成長している。あの頃の自分とは違うというところを見せつけてやると、勇気を奮い立たせた。

まず、この2年で新しく買った獲物(クイックルワイパー)を用意し、先端のシートをつけるところを外して代わりにガムテープを巻きつけた。今となってはなんでガムテープをつけたのか分からないけど、多分逃走防止用だと思う。

そして、そのままクモを突く。イメージは牙突だ(るろうに剣心ちゃんと読んだことないけど)。こうして見事にクモを葬っ……てはいなかった。

僕の剣さばきに恐れをなしたのかクモは逃亡。その様子を見た僕は阿鼻叫喚。冷蔵庫の裏に隠れたり、カーテンの裏に隠れたりし、そのたびに近くの壁を叩いて追い出す。出てくるたびに悲鳴を上げる。この世の地獄のような光景が繰り広げられた。

そして最後は部屋の隅に追いやり、一閃。ひゃああと言いながら何度もクイックルワイパーで潰した。こうして、60分に渡る死闘を制した。

クイックルワイパーを強く握りすぎたので、手のひらの皮がベロベロに剥けて血まみれになったけど、名誉の負傷だ。

これで今夜は安心して眠れる。ただ、クモが出たということは、その餌であるヤツがいるという可能性があるし、ヤツがいるということはまたクモが現れるかもしれない。どうしよう。引っ越したい。