ハイスピード

食事はゆっくり食べましょうとよく言われる。

よく噛んで、味わって、周りと歓談しながらゆっくりと楽しみましょう、これは子供の頃から叩き込まれた鉄則であるし、多分正しいものだ。

ただ、その鉄則に真っ向から歯向かう原則がある。それは、料理は基本的に出来たてが一番美味しい、ということだ。大抵のものは大体出来たてが、アツアツヒエヒエのタイミングが一番美味しい。モタモタ食ってれば食っているほどに味がどんどん損なわれていく。

麺類なら伸びてしまうし、揚げ物なら衣がシナシナになってしまう。だからこそ、焼き立てのパンは有難がられるし、焼肉屋は大人気なのだ。ある意味で、食事はスピード勝負と言えないこともない。もちろん、メニューによるけどね。

さて、そんなスピードが問われる食事の中で、一際スピードが必要な料理がある。それはそう、コメダ珈琲シロノワールだ。アツアツのデニッシュの上にヒエヒエのソフトクリームがのせられたスイーツである。

この説明だけで恐ろしさが伝わる。トップスピードで駆け抜けないと、これは美味しく召し上がれない。席に届いた瞬間から、いやむしろソフトクリームがデニッシュの上にのせられた瞬間からもうすでに戦いの火蓋は切って落とされている。

デニッシュの熱とソフトクリームの冷、この2つはたたでさえ常温の中でどんどん失われていく。そのうえそれぞれの熱気と冷気のせいで、デニッシュは冷めていくしソフトクリームは溶けていく。こんな恐ろしい食べ物があるか。

これを頼んだら、悠長に食べている時間などない。間にコーヒーを飲んだり、豆菓子を摘んだりする余裕もない。ただ一心不乱にシロノワールを味わうしかないのだ。モタモタしていたが最後、皿の底に広がる溶けたソフトクリームを見て悲しくなるしかない。(それはそれでスプーンですくって飲む)

こんな忙しない料理は滅多にない。それでも食べる。だってシロノワールは美味しいから。もちろん、写真を撮っている暇はないので写真はない。絶対にあった方がいいけど、無いものは無い。食べている最中に思いついたからあるわけがない。

 

 

これは全然関係ない話なんですけど、シロノワールにおけるさくらんぼってなんの意味があるんでしょうかね。