朝食戦国時代

20数年に渡る朝食群雄割拠の時代、その歴史上初めての統一を成し遂げたのはひきわり納豆であった。

その喉越しの良さ、ご飯にかけるだけという手軽さ、そしてなんとなく健康に良さそうというイメージから朝の食卓を統一。およそ半年もの長期の政権を築いた。途中、小粒納豆家による乗っ取りなどもあったが、傭兵部隊キムチを導入し、安定した統治を行っていた。

その統治に綻びが訪れたのは冬の頃であった。寒い朝、冷たい納豆は軍勢を動かすのに手間取った。その隙を突いて天下を統一したのがお茶漬けである。一地方の弱小勢力に過ぎなかったお茶漬けだったが、梅干しと同盟を組み、瞬く間に納豆勢を駆逐した。温かいご飯にお茶漬けの素とお湯をかけるだけという手軽さ、そして暖かさ、何よりサラサラと食べられるスムーズさは高い機動力を有し、時間のない朝で猛威を振るった。

しかし、その天下は長くは続かなかった。1ヶ月もすると飽きが来るようになってしまった。これが世にいう一月天下である。この時、朝食の空白期間が生まれた。コンビニのパンや食パンなどの短期王朝が次々と生まれては消えていく中、虎視眈々と王権奪取の機会を窺っていた者がいた。そう、レトルトカレーである。遡ること半年以上前、実家から大量のレトルトカレーが届いていた。しかし当初は冷遇され、戸棚の奥にしまいこまれていた。

だがこの朝食空白期間の中で食べるものがないとなり、ついに侵攻を開始したのである。ご飯とカレーという2回チンが必要になるという大きなデメリットを有しながらも、食欲のない朝にスパイスの力で食欲を呼び起こすという戦法は新たな道を切り拓いた。

しかし、レトルトカレー王朝もまた長くは続きそうにはない。資源が少ないのだ。このままだとあと1,2週間で尽きる。レトルトカレーの在庫がなくなったとき、朝食の勢力図はどう変わるのか。強大な力を誇った納豆が再び復権するのか、ワサビという新たな同盟相手と組んだお茶漬けが盛り返すのか、レトルトカレーが在庫を補給するのか、はたまた新たな勢力が現れるのか。私にはわからない。

今まさに、朝食の戦国時代が訪れようとしている。