片手鍋の数奇な運命

我が家には片手鍋がある。パスタを茹でたり、野菜を茹でたり、肉を茹でたりしている。大き過ぎず小さ過ぎず、蓋もついているのでなかなかに重宝している。

なんだかんだ週一のペースで出勤しているだろう。調理器具の中では、不動のスタメンと言ってもいい。

ここまでべた褒めしているけれど、別に大した物でもない。引っ越してすぐ、パスタを茹でるのに鍋がなくて、とりあえず近所のホームセンターで買っただけのものだ。ひとまずの繋ぎとして、1000円もしなかったと思う。

とりあえずはこれで凌いで、いずれはちゃんとしたやつに買い換えようくらいに思っていた。それからズルズルと4年くらい使い続けている。

いや、別に買い換えるタイミングが無かったわけでもない。2年くらい前、汚れがひどくなってきたし、所々へこんでもきていたので、買い換えようと決意したタイミングはあった。

 

とりあえず次の燃えないゴミに出そうと思って、部屋の片隅に置いておいた。

だが、燃えないゴミというのは意外と溜まらない。次の回収日が来たはいいものの、片手鍋1個だけを捨てるのは面倒だし、その為だけにゴミ袋を買うのも勿体ない。

そうこうしているうちにパスタを茹でたくなって、手頃な鍋もないので部屋の片隅から片手鍋を拾い上げ、使った。使ったあとは、洗ってシンク下にしまった。そして現在に至る。

 

一度は捨てられる運命だったのに、どういうわけか今でも使っている。今となってはもう別に買い換える気もない。