最後の戦士

昔からオシャレに無頓着で、着られてればなんでもいいという思想だった。

今も根っこの部分は変わってないけど、多少は見てくれを気にするようになった。服を買うときは無難なデザインを選ぶし、あまりにもダルダルのものはちゃんと捨てるようになった。

ただ、パッと見で見えないところに気を使わないのは相変わらずだ。具体的には下着。シャツや靴下なんかは割と「これもう使い物にならないだろ」というくらいまで着続ける。

もちろん、パンツだってそうだ。ゴムがヨレヨレになるくらいまで履き続ける。

 

ただ、去年から今年にかけて何枚かのパンツが一斉にダメになった。買ったタイミングが同じなので、ダメになるタイミングも大体一緒だった。仕方がないので買い足すことにした。

そのとき、なんとなくこれまで履いていたトランクスからボクサーパンツへと切り替えた。特に深い理由はない。ボクサーの方がなんかいいんじゃない?くらいだった。

こんなようなことを去年から今年にかけて何回か行った。その結果、持ちパンツのほとんどがボクサーパンツになり、トランクスは一枚だけになった。

 

この一枚はいわくつきのものだ。まだ学生だった頃、服に無頓着な僕を見かねた祖母が、時折服を買ってくれた。そのときに買ってもらったうちの一枚だ。

しかし、僕が実家から下宿先へと戻るときにうっかり実家の棚の中かどっかに忘れてきてしまった。

時は流れて社会人になるとき、一人暮らしをするために荷物を整理していたらこのトランクスが出てきた。最初は訳が分からなかったが、なんとなく事情を思い出して、そのタイミングで履き始めた。

そんなわけで、こいつだけ劣化が遅かったのだ。

 

全部ボクサーパンツで揃えたいという気持ちはあるが、それ以上に「まだこのトランクス履けるしな」という気持ちのほうが強い。まだどこかが緩んだりほつれたりということもない。

最後のトランクスとして、これからも活躍していってほしいなとちょっとだけ願っている。